視覚障害者の今 〜誰にでも起こりうる中途失明とは〜
1.はじめに
私は現在、京都市北区にある視覚障害者のための施設「ライトハウス」において音訳ボランティアの養成講座を受講しています。そこでの体験を踏まえながら、今回は中途失明について報告したいと思っています!
2.「中途失明(ちゅうとしつめい)」って何!?
中途失明とは、人生の途中で視力を失った人のこと。一般的には、15歳〜60歳頃までに病気やけがなどで失明した人を指すことが多い。中途失明になる原因としては、緑内障、糖尿病網膜症、網膜色素変性症の3つが主要原因と言われ、そのほかには網膜剥離やぶどう膜炎、白内障があります。
- 一定の年齢になれば誰にでも起こりうるもの
→ 老視や白内障など 老化と共に誰にでも訪れます。 - 早期発見、治療をしないと失明の可能性があるもの
→ 糖尿病網膜症・網膜剥離など 糖尿病の合併症として突然発症し、急速に症状が悪くグル−プ。このグル−プが中途失明では一番リスクが高い。 - 細胞の老化などの理由で早期発見後も治療が難しいもの
→ 加齢黄斑変性など 高齢者の失明理由で最も多く、加齢と共に機能の低下で最終的には失明するというグル−プになります。
※特に2のグル−プは中高年にも若者にも年齢差はあまりなく、朝起きたら視界が欠損していて、慌てて眼科に行ったがすでに手遅れだったという事もあるそうです。
(参照:井上治朗・村上茂樹共著[2006]『眼の成人病(改訂)』日本プランニングセンタ−)
〜失明(中途失明)の3つの分類〜
- 全盲(ぜんもう)… まったく明暗を区別できない状態
- 光覚弁(こうかくべん)… 明暗のみを区別できる状態
- 手動弁(しゅどうべん)… 眼前の手の動きのみを認識できる状態
また、その他には・・・
- 近視…近くが見えて、遠くが見えにくい。
- 遠視…遠くが見えて、近くが見えにくい。
- 色弱…特定の色が見えにくい。
- 色盲…特定の色が見えない、または違う色に見える。
4.中途失明になられた方のお話を通して
ライトハウスにて音訳ボランティア講習を受ける中で、中途失明の方からお話を聞く機会がありました。その方は、40代の男性です。「これまで何不自由なく生きてきたのですが・・・」という一声からはじまり、ある朝起きて目を覚ますと視覚の一部分が真っ黒になっていたため、慌てて眼科を受診したところ眼科医から「手遅れ」と告げられたということをおっしゃっていました。あまりに突然すぎる出来事であり、またはっきりとした原因もわからなかったため胸の内は不安でいっぱいになる中、どんどん視力が奪われていく恐怖と闘う毎日だったそうです。中途失明に陥った人がまず何に困るのかというと、周りの「情報」です。たとえば、食品に書いてある消費・賞味期限がわからずにそのまま食べておなかを壊したり、買い物に行った際にどのお札を持っているのかわからない。見えること=普通のこと、という価値観が大逆転したことにより、一時はどうすることもできずにひきこもるしかなかったとお話されていました。そういったお話を聞く中で、自分が一人で暮らしていて周りに頼れる人がいない場合、私は果たして生きていくことができるのだろうかと不安がよぎりました。
5.中途失明者への支援体制
幼児期に失明した場合は、盲学校での点字による教育やマッサージ師の資格の取得によって生まれつきの視覚障害者と変わらない状況に持っていくことができます。また、老化による失明では、難聴や認知症と同じくデイケアセンターなど(※施設によります)において介助支援を受けることが可能です。その他にも行政による様々な支援があります。
- 相談事業…地域生活や社会参加に向けた支援を行うことを目的としている。主に中途失明者自身と、その家族の心理的サポートが行われている。
- 生活訓練事業…中途失明者が地域生活を継続するための支援を行うことを目的としている。盲導犬の利用や、白杖補講訓練、日常生活(身辺動作、家事動作、調理、掃除等)、パソコン操作などの支援も行われている。
- 交流会事業…中途視覚障害者とその家族が前向きな気持ちで地域生活が送れるよう支援を行うことを目的としている。生活や将来の悩みを経験してきた人たちとの交流や情報交換の場が提供されている。
担当:玉川典子