百聞は一見に如かず・第8回「京都三条ラジオカフェ」
『百聞は一見に如かず』8回目となる今回は、京都三条ラジオカフェのスタジオのある京都市中京区三条御幸町角の1928ビルにおじゃましました。
ここの1階ではNPO京都コミュニティ放送がコミュニティFM
「このラジオ局はNPOとしては日本で最初に開局された放送局です。原則として番組制作者イコール出資者ですので、スポンサーなどに左右されずに自由に発言できるのが特長です。局のコンセプトは市民が気軽に参加できる!というものなので、ボランティアもどんどん気軽に参加してほしいです。」と技術チーフディレクターの時岡浩二さんは話してくれました。
NPO京都コミュニティ放送は京都都心コミュニティの活性化をめざして2001年9月に設立され、2002年3月に京都府から認証を受けて法人格を取得、そして1年後の2003年3月にラジオ局を開局したそうです。
放送局の番組づくりは、市民が番組制作チームをつくり、番組会員という放送局の一員となって進めるのが基本です。放送利用料を払えば番組を持つ権利を得られ、例えば、毎週1回の3分番組なら利用料は月額5000円、30分番組なら5万円ということです。この形で番組づくりに参加しているのは、現在40〜50チームです。
ラジオカフェで作られている番組は制作によってバラエティに富んでいます。まちづくりを進める専門家とボランティアのレポーターチームによる局制作の「ウォーキングカフェ」。市民活動総合センターによる番組「市民活動応援隊」。気候ネットワークのボランティアによる「気候ネットワーク」。野村証券による番組「センスアップ経済」ではエコノミストの池坊雅史さんも出演されているそうです。また深夜の「ラジオ・アンデパンダン」は京都のインディーズバンドなどの曲が流され、固定リスナーも多いとのこと。
「放送局を立ち上げたコンセプトのひとつは、市民が自ら発信する力をつけよう!ということです。ラジオを聞くという受け身から、自ら発信するという利用の仕方を考えていってほしい。」と時岡さんはおっしゃっていました。
ラジオカフェは現在、職員4人・ボランティア10〜20人で運営されており、ボランティアはニュースを読むアナウンサーや機械のエンジニアとして、また「ウォーキングカフェ」などの局制作の番組で活躍しているそうです。ほかに広報や営業のボランティアもできる体制をつくっていく予定なので、これらの分野でも活躍していってほしいとのことでした。
時岡さんにこれからのラジオカフェやそこでボランティアをして経験できることをうかがうと、「おこづかい程度で電波が利用できるという環境を定着させ、全国に広げていきたいですね。それからラジオ放送の技術は専門的で、普通プロしか携わる事ができませんが、ここではアマチュアでも関わる事ができます。将来ラジオ局などの業界に入りたいという方が経験を積む場としても貴重だと思います。ラジオカフェは始まって1年、まだシステムの構築段階です。内側からシステムを新しくつくりあげるという面白さもあるのではないでしょうか。放送局を市民がつくるというコンセプトにどんどん関わっていってほしいと考えています。」と答えてくださいました。
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土曜午後1時、番組「ウォーキングカフェ」の生放送があるということで放送現場におじゃましました。
「ウォーキングカフェ」は、京都のまちに出て、「まちづくり支援研究所 市民空間きょうと」の代表を務める山田章博さんとボランティアのレポーターチームが町中を歩きながら、出会った人達やお店をレポートする番組です。京都のまちなかを歩いて楽しめるようにしたい、現場を歩いてまちの声を伝えたい、との山田さんの発案などで開局と同時に始まりました。
今日のレポーターは前半が泉谷聖子さんで後半が中野新一さん。山田さんはレポーターの方と一緒に歩いて、建物や道などの由来や成り立ちを解説していくという役どころです。その他にディレクターとして加藤琢也さん、そして中野佐智代さんの5人が今回の番組の担当です。この日の出発地は三条川端を東に100m程行った町家の前でした。そこから泉谷さんは町家の様子や情景を話しながら西に向かって歩いていきます。まさにまちなかの様子をレポートしながら作っていく番組です。そのまま西に向かって歩いていき、泉谷さんはまちかどのお肉屋さんに入り、お店の方にお話を聞いていました。お店から出た後、レポーターは中野新一さんに交代。お肉屋さんの向いのビルから始め、まちなかを歩きながら、山田さんと中野さんのトークです。そして仁王門通にある頂明寺へ。そこでお寺の由来や様子を話し、このお寺で番組は終了しました。
放送の後、ラジオカフェのスタジオの横にある喫茶店、その名も「ラジオカフェ」で皆さんにお話をうかがいました。
「ウォーキングカフェ」にボランティアとして参加した理由をみなさんにお尋ねしました。「山田さんと知り合いでもあり、勉強会に参加したりしたことから。」と中野新一さん、「夫について始めたということと、前から絵を描いてきたけれど、レポーターもやってみたいなと思って。今ではすっかり楽しんでいます。」と中野佐智代さん。「声を使うということでラジオ放送に参加したくて。」とは朗読をやっておられるという泉谷さん、「以前ラジオカフェでラジオドラマをつくったのですが、そのときにボランティアを集めていると聞いてやってみようかと。」とは加藤さん。理由も様々です。
やっていて良かったなと思う事やこれから「ラジオカフェ」でしていきたい事としては、「歴史を経験してきたまちの人の声が聞け、自分もみんなもラジオ番組作りに参加していると実感できる。これは楽しいですよ。」と中野新一さん。「まちの人の声をリポートで聞いているとき、マイクを通すことで普段では聞けないことも聞けると得したと思う。まちなかでこういう話を聞いたと知り合いに自慢できる事もあるし、視野も広がっていく。ラジオの経験をいかしてシティマップとか作りたい。」とは佐智代さん。「京都に来て20年経つけれど、レポートを通じて京都のまちのことがよくわかるようになった。」というのは泉谷さん。加藤さんは現役の大学生で、メンバー中一番の若手。「京都に住むようになってもまちの人と話すことがなかったけれど、番組でその機会ができて、自分をひろげていける。ラジオなのでテープに残しておいて後でレポートで聞いた事とかを思い出せるのもいいところですね。これからも番組を長く続けてまちの人の声を伝えていきたいし、まちに住んでいる人は周りをもっと見渡していってほしいです。携帯電話で画像をとり、それを残していくというようなことも考えています。」と話してくださいました。番組発案者の山田さんは「京都の歴史を人の声を聞くことで残していきたい。そして人と人がフランクに付き合ったり、京都にラジオを聞いた人が来てくれたり、新しく京都のマンションなどに住みだした人に聞いていってほしい。」と、番組のコンセプトを語ってくださいました。
ボランティアの皆さんが自分から楽しく活動しているのが強く感じられて印象的でした。きっと皆さんの気持ちが電波になって毎週京都のまちなかをとんでいる事でしょう。
(S・A)
イラストは2点とも中野佐智子さんに頂きました。ありがとうございました。
住所 | 中京区御幸町通三条角 |
連絡先 | TEL:(075)253-6900/FAX:(075)253-6901 担当:時岡 |
連絡時間 | 火・木・金曜 10:00〜18:00 |
URL | http://www.radiocafe.jp |