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あゆの実習日誌「あゆの実習日誌」

30度を越える猛暑の中、8月4日(月)から28日(木)まで老人福祉総合施設「原谷こぶしの里」で泊まり込みで社会福祉現場実習をしました。ここの施設には以前から大学で所属しているボランティアサークルで何度か訪問した事がありますが、実習1日8時間という事でどうなる事やら…っと不安でした。事前学習?で知識は詰め込んで、それがどこまで活かせるのかと実践するのが目標でした。

そんなこんなで期待と不安が入り混じる中での初日!!
やはり行動をスムーズにする事が出来ず不自然な対応になってしまいました。それは職員からの注意事項や説明を意識しすぎた事に原因があったのです。さらに特別養護老人ホームでの痴呆棟の実習だった事もあり、コミュニケーションの難しさにぶつかってしまいました。初日のカリキュラム終了後…本当に本当に正直、あとの実習カリキュラム終えれるのか!?と考えてしまう程、ヘトヘトでした。プラス、12畳くらいの部屋で1人で寝泊まり…。1人は自由で良いとは言うけれども寂しかったです。TVだけはあったので助かったって感じでしたか。それと、ケアハウス「リブル北山」の入居者の76歳の女性と仲良しになり、いつしか寂しさもどこかへ消えてしまいました。

カレンダーを気にしつつ、1日1日の実習カリキュラムを少しずつこなして、分からない事があれば職員に聞き、1つ1つの課題を解決し、それを、自分のものにしていこうと、毎日の実習に臨みました。そのような行動により利用者の受け容れを上手くする事が出来るようになったかな?と感じられました。しかし、痴呆棟という事もあり、利用者の感情の変化が激しく、その時々の対応の仕方にとまどう事もしばしばでした。そして、感情の変化に恐ろしさを持っている自分がいる事に気が付きました。利用者1人1人を理解するために、ケースファイルを見て呼びかけから会話のきっかけをつくり接しました。そして、その利用者独自のタイミングをつかみ1つ1つの言葉と行動を丁寧にして接しました。

初日にコミュニケーションにつまづいて悩んでいたのですが、傾聴する事に、喜び楽しみを覚える事が出来て、笑顔を見せてくれた時にとても嬉しく感じられるようになっていました。
そう感じられるようになった裏には、利用者Kさんとの関わりがありました。Kさんとの関わりで一番多く接していた時は、食事の時でした。Kさんは介助が必要で初日から何度か介助を担当しました。
顔をたたかれたり、箸でつつかれたり、食器を返されたりと毎日が戦場でした。「どうしてこんな危ない思いをして…」そんな気持ちさえ頭の中に過るものでした。しかし!!そんな事でめげては駄目だと思いKさんの理解に努力しました。その努力も実り、徐々にKさんのリズムとタイミングでの介助が可能になりました。Kさんは、たたく、つつくという行為で愛情を表現しているのであって悪意を持つ行為ではない事に気付いたからです。その時のKさんの表情に笑顔が見られたのです。Kさんなりの訴え方があるのです。そうした理解の上で接していくうちに私の「美味しいですか?」の問いかけにもうなずいてくれるようになりました。時には手招きで私の事を呼んだり、近寄ると凄く嬉しそうに笑顔でたたいてきて私の手を握って離さないという事もありました。その時の事は、今でもはっきり覚えています。Kさんありがとう…♪thanks

コミュニケションとは、相手にどのような言葉で共感や助言を伝えるか、どのような表情や姿勢で関るかという「相手に働きかける事」のみでは上手く成り立たず、それにプラスして相手に対する感情に真っ直ぐに向き合い、自分に対して、嘘のない自然な姿勢で関わるという「自分に働きかける事」が必要です。
前者のみばかりが優先し、利用者の主体性や自己決定・尊重を疎外してしまっていた頃が懐かしい…(トホホ) 実習を終えた今では自然体で接する事で無理のない関わり方が可能になり、それにより利用者の自然な姿、個性、素顔などが見えてくるようになりました。さらに一つの感情のみでなく、感情を自由に色々な方向から捉える事が新たな自分を発見する機会になりました。

その他、実習で、排池介助・入浴介助・シーツ交換・訪問介護・訪問入浴・配食サービス・厨房実習などをしました。その中で、その人らしい暮らしの尊重とは必要な事を感じ取り、安全、快適な生活をこちらが働きかける手伝いをする事で強制をするものではないと感じました。
そして、住み慣れた地域の中での生活の継続のためのシステムづくりを利用者や家族、地域連携で共に考え、歩んでいく姿も見る事が出来ました。
シーツ交換や掃除、片付けの時には、表だけの介助だけではなく裏での作業も安心・安全により良く生活してもらうために大切で、メリハリある生活を送ってもらうには、こちらが努力しそれを作っていくべきだと学びました。

今回の実習で当初は、現場をほとんど知らず経験も無く不安でしたが、実習を進めていくうちに、自分の経験は浅く偏っているとしてもそれらを丁寧に考察するのであれば恥じる事はないと考える事が出来、安心して無事に実習を終える事が出来ました。それは、周りの方々の支えがあった事も大切だと感じています。そして、援助技術は一つの道筋だけで行う事は難しく、奥の深さを持つ事を痛感しました。しかし、その貴重な経験や学んだ知識・技術を今後の良き素材課題とし、視野を広げ、様々な角度から学び、援助の本質を追求していくつもりです。そして、それを将来の自分につなげていく力としたいです。

立命館大・3回生・川口亜由美

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