あゆの実習日誌「あゆのつぶやき2」
地域福祉とは、社会変動によってもたらされた地域住民の生活上の問題に対して、行政サービスのみに依存しないで、地域に住む住民が地域への帰属意識と共通の目標を持って相互連帯をする事により関係性をつくり、住民が主体となり住民運動や活動を通じて、地域社会環境改善と必要なサービスを提供する事である。同時に、行政サービスの活性化を図る事と、地域民主主義の開発と確立が期待されている。
これをもとに、現在私が住んでいる仁和学区の高齢者福祉やサービスの実態を事例に挙げ、地域福祉と高齢者福祉の関係について考えてみた。
現在、日本は高齢化社会となり、家族のありようは戦前と大きく変化してきている。それは核家族という問題だけではなく、老後に対する意識にも変化が起こってきている。そこで政府は、家族介護の限界を認め、介護保険制度を導入し、介護サービスは主として民間事業者に委ねられ、公的サービスの充実化を図っている。しかし、サービスに関わる人の印象では自ら利用を申し込む人は必ずしも多くないようである。仁和学区でも高齢化が進み市内では東山区に次いで2番目の高齢化率になっている。このような現状の中で、仁和学区ではどのような高齢者サービスがあり、それがどのように地域の中で展開されているのか調べてみた。
現在、仁和学区で行なわれている介護保険サービスは住宅のみであり、高齢者が住み慣れた地域でいつまでも生き生きと暮らし続けていけるようなサービスを中心として実施されていた。特に、痴呆対応型共同生活介護(グループホーム)では、個室を持ち家庭的な雰囲気で生活が出来る所に魅力を感じた。しかし、公費負担の対象となる福祉サービスの内容や負担を、利用者や家族が求める水準にいかに近づけられるのかが課題になると私自身住民として考えている。
地域住民主体で行なわれているサービスは、専門機関・施設との連携により社会福祉協議会が取り組む事業を通じて、介護保険制度により福祉サービスが経営主義にならないように、利用者を支援している。「ふれあい配食活動」は地域住民のボランティアの手で直接弁当を届けるという事に大きな意味があり、利用者宅に弁当を持って行くという事で、どのとうな事に困っているか、また、必要としているかという事を住民が直接見聞きすることによって、地域における具体的問題が浮かび上がる。それを住民の手によって改善していく事で、地域福祉が成り立っていくのである。そして、「会食会・茶話会」は地域参加を推進していく事で住民同士の触合いを進め、信頼や関係性を築いていく良い機会になり、独居高齢者には良いサービスであると感じた。しかし、生活ニーズの把握や情報提供、相談に積極的に取り組んでいき、介護保険の枠に留まらず利用者の必要に応じたサービスを日常生活と併せて、社会福祉協議会と各施設、学区との協力で提供する事が課題になると感じている。
さらに問題として、ボランティア不足や賛助会費や共同募金の減収、公的助成の縮小等により休止されているサービスがあり、住民主体が決して十分なものとは言えず、活動に関わる人々の関係性を深めていく事や限られた資源の中での運営について地域で考えていくべきだ。
そして、高齢化率の増加に伴って、それが直接高齢者問題に結び付けられ、高齢になると皆が介護が必要だというイメージで捉えられているが、介護や援助を必要とせずに元気に生き生きと生活している高齢者に注目して欲しいものだ。長年の経験や知識を多く持つ高齢者は、今や地域社会において地域福祉を成り立たせるにはなくてはならない存在なのである。実際に仁和学区でも、高齢者ボランティアの方々が何人かいて地域福祉のネットワークを担っているのである。そこには、生き生きと積極的に毎日の生活を楽しんでいる姿があり、社会参加を通じた役割活動が生きがいに繋がり、それが健康づくりにもつながっていくようである。もちろん、皆が社会活動に積極的なわかではないし、24時間介護を必要とする人もいる事も事実である。このような人を地域社会でのネットワークで包み込むように私たち地域住民の手によって、家族や高齢者を精神的にサポートするべきだ。
それが、自然な形でサポート出来る地域が構築される事によって、始めて公的サービスが活きたものになると考える。
仁和地区における高齢者サービスを調査してみて、社会福祉の領域において目指されるべき地域社会のあり方は公的サービスを側面から支える「住民のサポートネットワーク」とその地域社会に生活し、その地域社会を活動の場とするボランティアは地域福祉において最も重要な役割を担っていて、ボランティアを担っている住民ネットワークははなり知れないほど大きな力を持っているのだという事が実感出来た。そして、地域においてグループが幾重にも重なる事で、自然な形のネットワークに組み込まれていく事こそが、真の「地域の関係性」なのだ。このように、特に、ボランティアというものを意識する事もなく、ボランティア活動のネットワークの一員になる事の出来る環境づくりと誰もが参加でき、多様な福祉ニーズに対して柔軟に対応できる地域福祉活動がこれからの地域に望まれているのではないだろうか。私自身も他人事とせずに、仁和学区の地域住民として住民の問題について真剣に考えていきたい。
地域社会において、新しい人間関係の模索が行なわれつつあるが、介護保険や権利擁護関連事業等、社会福祉が大きな転換期を迎えようとしている中で、地域における住民の主体的な参加による地域福祉を推進する事が、その地域に住むすべての住民の生活の質を高めていく事に繋がるだろう。
<参考文献>
- 小坂善次郎
- 「高齢社会福祉と地域計画─介護保険制度と新地域システム─」中央法規出版
- 沢田清方
- 「住民と地域福祉活動」ミネルヴァ書房
- 福祉士要請講座編集委員会
- 「社会福祉援助技術論II」中央法規
立命館大学・4回生・川口亜由美