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Why do we need volunteers now?
Vol.8「福祉主義とボランティア」

憲法シリーズ3回目の今回は、ボランティアといえばやはり高齢者、障害者、児童などの福祉分野での活躍が多いが、その福祉と憲法との関わりについてかんがえてみたい。

日本国憲法25条
第1項 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
第2項 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

この1項に挙げられている権利は「生存権」と呼ばれる。国民は誰でも人間らしい生活を送る権利を有する、ということである。そして2項は、この生存権を具体化すべき責務を国が負うことを定めたものと一般に解されている。
つまり生存権を保障するため、さまざまな社会福祉政策を行うのは憲法上の要請でもあるということである。生活保護法や児童福祉法などさまざまな社会福祉立法は、これを受けたものといえる。br /> このような憲法の規定が置かれていることの主な意味は、やはり資本主義の欠点の補完というところにあるだろう。すなわち、資本主義のもとでは社会的弱者は強者によって食い物にされ、ずっと弱者のままになりかねないという構造的な弱点を国家の介入によって補おうというのである。これが資本主義における「福祉国家」という言葉の意味である。

「福祉」は国の重要な責務

このように、(法律的にいえば生存権の権利の性質などの問題はあるもののそれをうんぬんするまでもなく、)国がその施策として福祉を推進することが求められているのは憲法上明らかである。
それでは「ボランティア」についてはどのようなスタンスをとることが求められているのだろうか。
それにはまず福祉分野において現状でボランティアが果たしている役割を明らかにしなければならない。この点、介護保険や支援費などの制度の整備が進んできているとはいえ、行政のサービスはまだまだ質的にも量的にも不足しているといわざるを得ず、日常的な介護・介助などのボランティアが多く必要とされるなど福祉におけるボランティアの役割はいまだ大きいと思われる。
本来は一律・公平なサービスの行政、細やかな機動的な対応のできるボランティア、と質的な役割分担がなされるべきと思われるが、質的どころか量的にもボランティアの役割が大きく、とてもこのようにはなされていないのが現状のようだ。
とすれば、まずこの量的な依存を解消すべく、行政の福祉サービスがもっと充実されなければならない。これは介護保険の制度改革など現在大きな変革期であり、その推移を見守りたいと思うが、その際にはボランティアの果たす役割についても国の施策として明確なビジョンを示してほしいところである。
そして行政のサービスからのアプローチだけでなく、ボランティアからのアプローチも必要であろう。地域の互助組織が十分に機能しない現在においては、生存権の分野に限らず、ボランティアというものを国の施策の一部として考えることは必須となっているといってもよい。従来からボランティアが大きな役割を果たしてきた福祉の分野、もっと積極的に法制度を整備し、ボランティアが活動できる環境を整えていくことが必要ではないだろうか。

(Y・H)

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